『野外にて』(岩波文庫)と索引

ジェフリズ著、板倉勝忠訳、1951年刊行。原書は1885年刊行。https://www.iwanami.co.jp/book/b247438.html

代々木八幡にあるリズム&ブックスさんでおみかけ。

どの時期の岩波赤も好きだけど、このタイプのカバーは特に好き。

画像1

袖の紹介文には

「イギリスの田園風景の自然と生活を克明にあたたかく描写。ホワイトの『セルボーン博物誌』とともに自然観察記録文学の傑作」

とのこと。「ホワイトの『セルボーン博物誌』」も存じ上げないが、本を開く。

例言 

三 固有名詞を始め、外國語の發音は專ら英音一本に統一したい素志であったが、實際に臨むとそれもやはり一長一短を免かれ難く、終に一種の折衷におわった。註解の部に、時に英音をも重ねて示してあるのは此の事情(又は未練)に基づく。… p.3

この「未練」の部分に真面目さと、ゆるさを感じてグッと来る。岩波文庫は真面目な優等生のふりをして、たまに気付きにくいところでふざけてくるのが(そんな意図はないのかもしれないが)好きだ。加えて、自分の抜け切れない厨二病からか、旧字体にもテンションが上がる。

索引を開いて、……これはいい!となる。

「すずめ」の生態 75-76, 80
鳥の足あと 163, 164
ナポリ 266, 271
ビスマルク 253

といった動植物などの固有名詞は想定の範囲内であっても

奴隷的本能(男女の) 127

なんてのがあってギョッとしたり

森林(林を見よ)

もちょっと笑える。

※「を見よ」参照
相互参照では,索引で採用された見出しに対して,異なる見出しを探索の手がかりとしてアクセスできる手段を提供し,及び読者が探索の手がかりとして選んだ見出しと関連性のある別の見出しが存在していることを報知する。前者の目的を達成するために「を見よ」参照を使用し,後者の目的を達成するために「をも見よ」参照を使用する。
(科学技術情報流通技術基準 索引作成より
https://jipsti.jst.go.jp/sist/handbook/sist13/main.htm)

他にも

田園の美女 189-201

なんてもはや目次と同じで、さらにこれとは別項目で

美女(田園の) 189-201

なんてのもある。(…分ける必要あるのか?)
さらに言うと

ブロンド 148

は元のページをみてみると

ブロンド(の美女)の白い踝は陽に輝いて…

となっていて、「美女」と本文に入っているのに索引には採用されていない。「美女」の採用基準がわからない。。


そして、この「田園の美女」もそうだけど、実際にその単語がページに載っていなくても、書かれた内容を示した単語が索引の項目となっていることが結構多い。たとえば

金銭への執着 289
藝術的とは何か 231-233
迷信と科學 23

とか。

自分で索引を作るときもこんなふうに内容の要約ってほどじゃないけど、「こんなような話をしています」っていう索引項目を作れたらなって思うけど、踏ん切りがつかず、結局うまく作れない。

原書も手に取ってみたくなる。